株と債券の比率 盤石な分散投資ポートフォリオを目指して
以前,こんなツイートをしました.
アセット・アロケーションが投資パフォーマンスの8割を決めると言われています.
アップル(AAPL)を買うかアマゾン(AMZN)を買うかより,どのアセットクラスにどれだけ振り向けるか,という一見より抽象的な方が投資パフォーマンスには重要だというのは興味深いところです.
そのなかでも,特に株と債券のバランスはよく議論されていて
- 理想のアロケーションは株式60,債券40
- 年齢が上がるに連れて債券の割合を増やすほうがいい
というのを聞いたり読んだりしたことがある人も多いと思います.
株式と債券の理想比率は,その人の
- 経済状況
- 人生のステージ(年齢,家族構成)
- リスク許容度
など色々なファクターが影響するので正解はありませんが,私が今読んでいる『株式投資(第6版)』に面白い研究が載っていたので紹介します.
- ポートフォリオのリスクを抑えるために,株式と債券の割合をバランスさせるのが一般的
- しかし,過去のデータから,ポートフォリオの株式比率を高めるほど破産確率が下がるという結果が得られる
- これは,債券よりも株式のほうがインフレに対抗する力が強く,長い期間購買力を維持することができるため
- 健全な株式メインのポートフォリオを築くために1)現金確保 2)分散投資 3)レバレッジ商品は控えめ の3つが大事
株式比率と破産確率は負相関
結論 株式比率を上げるほど破産確率は低くなる
上のグラフから,株式比率が上がるにつれて破産確率が低くなっており,運用資産を年間5%ずつ取り崩すケースでは株式100%で破産確率が最も低くなっています.
年間4%のケースでは株式85%で破産確率が最も低くなりますが,100%にしてもそこからプラス2ポイント,誤差の範囲です.
この結果は以外ですが,少し考えてみると納得がいきます.
というのも,裏にあるのはインフレの影響だと思います.
債券は確定利付という点では安定していますが,購買力をキープしてくれるとは限りません.
いやむしろ今のようなインフレの局面では確定利付の債券では購買力は低下します.
例えば,100万円の利回り3%の債券で毎年3万円を受け取っていたとしても,5%のインフレが進んでいれば28,500円の購買力しか保てません.
しかも今がまさにそんな状況ですが,インフレ下では金利が上がりやすく,そうなると債券価格は下落し,債券価格は下落して購買力もキープできず,まさにダブルパンチです(満期保有なら額面で買い取ってもらえますが).
一方,株式は債券に比べて価格変動が激しくリスクはありますが,インフレ耐性力は債券よりも上です.
なぜなら,特にプライシングパワーを持っているような企業はインフレ下でも価格転嫁して利益を確保して,株主還元の財源を確保できるからです.
株式メインで健全な分散投資ポートフォリオを築くために
資本主義の根底にはマイルドなインフレがあるので,株式比率を高めにしたポートフォリオを組んでインフレ対抗力をつけるというのは悪くないと思います.
ただし,同じように株式比率が高いポートフォリオでもどうやってそこにたどり着いたか,というプロセスでかなり破産確率は変わってきます.
ここでは,株式メインのポートフォリオを安全に築くための条件を3つ考えてみます.
現金確保
運用ポートフォリオとは別に,半年間の生活費くらいのキャッシュを別に取り分けておくことが大事です.
現金を確保せずに,全資産を投資に回していると,下落相場で相当な不安を抱え,不安に支配されて冷静な判断ができず狼狽売り・パニック売りに走りやすくなりますが,これは長期投資家が一番やってはいけないことです.
分散投資の徹底
とにかく分散投資,銘柄はもちろん,セクター,カントリー,通貨,時間,とにかく分散を心がけます.
たとえ株式100%のポートフォリオでも,それが10年かけて十分な分散投資で作られてきたものであれば,それは突貫工事で作られた債券100%のポートフォリオよりもよっぽどリスクは低いはずです.
時間がいいワインを熟成させるように,いいポートフォリオも時間が作ると信じています.
レバレッジはNG
一部レバレッジを効かせてリターンを狙うのは投資戦略としてアリだとは思いますが,レバレッジメインのポートフォリオはリスクが高すぎます.
結果的にうまくいくこともあるかもしれませんが,マーケットから退場を食らう状況も十分にありえます.
長期投資家の仕事はマーケットに参加する時間を最大化して複利を最大限味方につけることなので,マーケットから退場を食らう可能性のある方法は避けるべきです.
スパイスを料理にかければその料理が引き立ちますが,スパイスのかけ過ぎは料理を台無しにするのと同じで,レバレッジ商品や仮想通貨も少し入れる分には面白いですが,入れ過ぎるは禁物です.
盤石な分散投資ポートフォリオを作るためのまとめ
- ポートフォリオのリスクを抑えるために,株式と債券の割合をバランスさせるのが一般的
- しかし,過去のデータから,ポートフォリオの株式比率を高めるほど破産確率が下がるという結果が得られる
- これは,債券よりも株式のほうがインフレに対抗する力が強く,長い期間購買力を維持することができるため
- 健全な株式メインのポートフォリオを築くために1)現金確保 2)分散投資 3)レバレッジ商品は控えめ の3つが大事
株式100%のポートフォリオと言うとかなりリスキーに聞こえますが,それが時間をかけて健全に築かれたものであれば,インフレとも戦ってくれる頼もしい存在になります.
巷で言われる株式と債券の理想バランス,はあまり気にせずに,自分のポートフォリオがどれだけの時間をくぐり抜けてきたかを考えて,その上で今一番しっくりくる割合に落ち着かせてあげればそれが一番うまく行くのではないかと思います.
では,また.
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