線形代数を学ぶモチベーション

2018年7月18日学習数学

 

線形代数.数学に興味がない人でも,名前くらいは聞いたことがあるかもしれません.数学を学んだ方にはもう,当たり前過ぎますが,線形代数は微積分と双璧をなす,基礎数学の2大分野です.数学のどんな分野も,線形代数と微積を学ばずして踏み込むことはできません.

 

しかし,線形代数は微積に比べると抽象的で,その意義をイマイチ感じにくい,という人も多いようです.

 

確かに,微積はガシガシ計算するし,数学記号も多く出てくるし,いかにも「数学してるぜ!」という感じですが,線形代数は行や列をスカラー倍したり,行や列を入れ替えたり,互いに足したり引いたり,などなど何のためにこの作業をやっているのかイメージが持てなくなることがあると思います.

 

私も当初は,逆行列の存在を調べたり,行列の階数(Rank)を調べる意義が理解できませんでしたし,連立一次方程式を解くのに簡単な消去法ではなく,なんでわざわざ掃き出し法を使うのか,等の疑問を持っていました.

 

しかし,今では線形代数の意義を感じています.個人的な意見ですが,この記事でそれを書いてみます.読んでくれた人が,少しでも線形代数に対するモチベーションアップにつながれば幸いです.

 

線形代数とは

線形代数の線形とは英語でLinearで,「直線の」という意味です.次数が二次以上になると非線形になりますので,線形代数で扱う範囲は一次式です.線形代数の代数は数の代わりに文字を用いて方程式を解く学問です(代数は英語でAlgebraで,線形代数はLinear Algebraです).

つまり,突き摘めてしまえば,線形代数は連立一次方程式を効率的に解くための学問です.こう考えるだけでもだいぶ敷居は下がるのではないでしょうか(線形代数を深く学んだ人からは不正確な説明だと批判を受けるかもしれませんが,まあ,取っ掛かりとしてはこんなイメージでいいと思います).
余談ですが,昔は高校でも数III・Cで行列をやりましたが,新しいカリキュラムになってやらなくなってしまったようですね.高校での行列が線形代数の入口だったのに,残念だなと思います.

 

線形代数の意義

線形代数のメリットは,連立一次方程式の解法を提供してくれる点にあると思っています.例えば,物理や経済学で,モデルを構築して計算を行いますが,その計算には変数(パラメータ)が多く,普通に解いたらにっちもさっちも行かないものを,線形代数は用いると解くことが出来るというケースが多くあります.

また,立てた方程式がそもそも解を持つのかどうか,あるいは解が一意に決まるのか,ある程度の自由を持てるのか,などを判断することもできます.

 

線形代数ではこうしたことを判断するツールを提供してくれますが,その応用範囲が極めて広いために重要です.実際,量子力学は線形代数と密接に関係しており,線形代数で学ぶ「エルミート行列」が登場します.

また,私は全然詳しくないのですが,今流行りの機械学習でも,線形代数が理解できていないと話がチンプンカンプンだと聞いたことがあります.

このように線形代数は,自然科学を深く学ぶための入場券のような役割を果たしていると私は考えています.

 

線形代数を学ぶには

線形代数で大事なことは,式が与えられた時に自分で計算を進めることができることです.そのためにはドンドン演習問題を解いて解法を自分のものにすることが大切です.公式は暗記するのではなく,自分で導出することが大切です.導出された道筋を遡り,自分で理解したうえで,必要な物は覚える,これが大切だと思います.

 

線形代数のおすすめテキスト

線形代数 キャンパス・ゼミ(マセマ)

予備校の講義をそのまま本にしたような内容で,わかりやすく,丁寧に解説されています.深く学べない,というコメントを聞くことがありますが,取っ掛かりとしてこの本から始めれば線形代数の計算は一通りできるようになると思います.深く学ぶのはその後で十分です.

演習編もでているようですが,テキストと演習編を2冊買うと,結構お金もかかります.問題数の多さを考えると,演習書はサイエンス社などから一冊適当なのを買うのでもいいかもしれません.

 

線形代数入門(東京大学出版)

ド定番の本です.線形代数を学んだ人なら,多くの人は持っている本ではないでしょうか.扱っている範囲も広く,また説明や証明も丁寧に書かれています.「入門」とありますが,一点,この本から入ると恐らく挫折すると思いますので,ご注意ください.辞書的に使うのもいいかもしれません.

 


[adchord]

Posted by Econ