数学ガール 数学への理想的な向き合い方

2018年7月8日学習数学

 

今日は数学についてのお話を.ブログの説明にもある通り,私は数学を中心とした自然科学ネタが好きです.大学では金融工学を専攻していたので,数学,統計学,確率論あたりはかじりました.このブログでも,たまには自然科学ネタの記事を書いていきたいと思います.

 

今日ご紹介するのは,数学ガール.本屋で見たことがある人もいると思います.

表紙を見ると,萌え系の本かと思いますが,そんなことはありません(マンガも出ているようですが,こちらは読んでいません.).まあ,一部登場人物の口調に違和感を覚えることはありますが….

数学ガールはシリーズ化されており(この4月に6作目のポアンカレ予想が発刊),一般向けとしては結構レベルは高く,このシリーズを読むには少なくとも高校数学(特に数列,三角関数,指数関数,微分)の知識は必要です.

数学ガールは,高校生の「僕」とその周囲の女性が繰り広げる数学談義から,数学のテーマについて掘り下げていく本ですが,数式を中心とした展開になるので,数式にアレルギーがあるという人には向かないかもしれません….

 

この本は,数式を追って純粋に数学を楽しむことも出来ますが,それ以上に,主人公の数学に対する向き合い方に共感を覚えるところがあり,また参考にもなります.いくつか挙げてみましょう.

 

数学は言葉を大事にする.できるだけ誤解が生じないようにするために数学は言葉を厳密に使う

確かにその通りです.私もそのクセが抜けずに,数学に関係ない日常の中でも,言葉の定義を求める傾向にあります.

 

本を読んでいて分からなくなったらその場所に印をつけておく.そして先に進む.しばらく先に行ったら印を付けた所に戻ってもう一度読む.分からなかったらもっと先まで読む.他の本も読む.そして何度も戻ってくる

これは数学だけでなく,ちょっと難しい専門書を読む時のスタンスとして参考にしたいです.専門書は,一読して全てを理解することは難しいです.しかし,わからないところで立ち止まってしまっては挫折します.そういう時は,そこは飛ばしてどんどん進む.進んでいくと,「あ,あそこはこういうことだったのね」とわかることが結構あります.完璧主義は捨てましょう.

 

数式の導入は最初から暗記するつもりではかえって身につかない.まずは自分の手を動かして理解することが大事.理解しないうちに暗記するということは普通ありえない

受験であれば公式の暗記は必要ですが,テストもない社会人なら,本当に腹落ちするには定理を自分の手で導いてみることが重要ですね.

そう言えば,結構前ですが,東大の数学の入試問題で「三角関数の加法定理を証明せよ」という問題がありました.三角関数の加法定理と言えば,数学を受験に使う受験生であれば誰もが知っているであろう公式(咲いたコスモス,コスモス咲いた&コスモスコスモス,咲いた咲いた…)ですが,それを証明せよとは,意表を突かれますね.

「証明できない定理を使っていたの?」と出題者からお叱りの声が聞こえます….

 

 

数式が出てきた途端に思考停止する人は多い.数式の意味を考える以前にそもそも読もうとしない.数式はお手上げと言っていたら数式を読まなくなり,考えなくなる.そして数学なんて役に立たないと嘯くことになる.そのうち,役に立たないから読まない,ではなく役に立てたくても読めない,になってしまう.難しい数式の意味は分からなくても,ここまではわかったが,ここからがわからない,と筋道立てて考えるべきだ

これにはハッと気付かされました.実は大した内容ではないことも,数式で記述された途端に凄く高尚なことが書かれているように思えてしまう.だから,数式を理解できるようになれば全く新しい世界が開ける,という幻想を抱いてしまう.昨今の数学ブームって,もしかしたらこういう所に端を発しているのではないかと.

個人的には,数学ができれば論理思考ができるようになり,仕事にも活かせるようになる,というのは幻想だと思います.数学で求められる論理性とビジネスで求められる論理性は次元が違いますし,ビジネスは論理だけでは動きません.数学とビジネスを安易に直接結びつけるのは危険だと思います.

一方,数式が読めないと数学を楽しめないことも事実で,数学が一部の人間にしか理解できない不可侵領域になるのはとてももったいないことです.日々研鑽を重ねて,数学の知識を深めていきたいと改めて思います.

 

自分が抱いた疑問に安易に妥協せず,ずっと考え抜くことは大切.そしてそれこそが勉強である

数学や物理って,「わからない,難しい」のレベルが他の学問と次元が違うと思うのです.政治や経済,その他の分野でも難しい話題はありますが,少なくとも何が話題になっているかはわかります.しかし数学は違います.わからないと,もう問題の意味すらわからない,そういう次元の難しさです.

でもだからこそ,そのレベルに触れてみたいと思いますし,数学者がどんなことを考えているんだろう,数学者の思考はどうなっているんだろう,とほんの少しでも理解したいと思います.ロマンです.

 

以上,最初にも書いた通り一般向けの本ですが,理解するには高校数学の知識が必要です.もし高校数学の知識がなければ,他の参考書で身につけた後,この本にチャレンジするといいと思います.社会人になっても知的好奇心を満たすために勉強をしていくことは,本当に楽しいです.


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Posted by Econ