時間と増配が投資回収の鍵となる

投資回収は時間と増配が鍵となる
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2023年3月4日配当

配当だけで投資を回収できたら…なんて考えたことはないですか?

私は「この銘柄は配当利回りがX%だからあと10年保有すれば投資のY%は配当だけで回収できる」とか「これは配当王銘柄なので,今後もA%で増配していくと想定したら,10年後には1年間の配で投資のB%を回収できる」とかしょっちゅうそろばん弾いて妄想してます.

配当だけで投資を回収できたら,仮にその後に株価がゼロになってもその投資からは儲けが出ていることになります(話が複雑になるので,時間価値はここでは考えません).

株価ゼロは極端だとしても,含み益と違って配当は実現利益なので,株価下落時でも配当がその株のパフォーマンスを支えるバッファーの役割を果たしてくれます.

  • 配当は実現利益,配当がその株のパフォーマンスを支えるバッファーとなる
  • 投資回収率 = 税引き後累計配当 / 総投資額
  • 投資回収率を高めるには時間が必要で,投資回収率と保有期間にはかなり強い正相関がある
  • 増配は投資回収率の増加率を高め,回収期間を短縮するためのブースト機能

投資回収率という考え

これまでに受け取った累計の税引き後配当が投資額のどれくらいの割合かを示したものが投資回収率です.

投資回収率 = 税引き後累計配当 / 総投資額

最も厳しく計算するために,私は分子の累計配当は税引き後で計算し,総投資額には手数料や税金などの諸費用も含めて計算しています.

パフォーマンスを税引前で計算する人がいますが,確かに税引前で計算すれば税引き後の約1.25倍,米国株の場合は米国での税引前で計算したら税引き後の約1.4倍のパフォーマンスになるので,いい数字が出てきて気分は良いかもしれませんが,結局自分の手元にはそんなに残っていないわけで,自己満足としか言いようがありません.

「死と税金だけは確かだ」というジョークもあるように,私は投資パフォーマンスを測る時は必ず税金を加味したもので計算しています.

上のグラフは私のポートフォリオにある銘柄ごとの投資回収率で,トップ3はP&G(PG),コカ・コーラ(KO),ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)で,いずれも配当王で投資回収率は2桁まで成長しています.

この中でJNJの投資回収率10%台ですが,配当王でおそらく今年も増配が期待できるので,水色で示しているように,今年は投資回収率20%台とワンランク上がるのではと期待しています.

他にも,ナイキ(NKE),ユニリーバ(UL),VT,ベライゾン(VZ),ゼネラル・ミルズ(GIS)あたりは,今年中に投資回収率が2桁の大台に乗るんじゃないかと密かに期待しています.

ディズニー(DIS)はダメですね,せっかくNISAで買ったのにまだ何も節税の恩恵を受けていません.

先日,CEOのボブ・アイガーが今年中に復配するように取締役会に働きかけるというコメントを出してそれに期待していますが,まぁ let’s see と言った感じです.

投資回収率と保有期間

私の場合,ディフェンシブ銘柄ほど投資回収率が高く,一般的にディフェンシブ銘柄は配当利回りが高いので,投資回収率は高くなると思われがちですが,必ずしもそうではありません.

投資回収率を高めるのに一番必要なもの,それは時間です.

クロノ・トリガーのように時間をまたぐことはできないので,配当で投資回収を目指す投資家は,同じくクロノ・トリガーの名曲『時の回廊』でも聴きながら時の試練に耐えなければいけません.

これは縦軸に投資回収率,横軸に保有期間(年)を取って銘柄ごとにプロットしたもので,右上にいるのはPGで,青のドットですが,私にはキラ星の如く輝いて見えます.

これを見ると投資回収率と保有期間には右肩上がりの相関があるのが分かり,実際に両者の相関係数は0.89とかなり強い正相関です.

保有期間が長ければそれだけ累計配当も多くなるので投資回収率が高くなるのは当たり前ですが,それ以上に大事な要素,それは増配です.

配当王や配当貴族などは特にそうですが,米国株には増配のインセンティブが強く働きます.

米国は株主還元意識が強く,配当で株主に還元するか,自社株買いや業績アップで株価を上げることが経営者に強く求められていて,それができない経営者は無能のレッテルを貼られて退場させられるため,経営者には増配のインセンティブが強く働きます.

実はこれが私が米国株をメインに投資している理由の一つでもあります.

昔は日本株投資もやっていましたが,日本企業は経営者が交代した時に,「前の経営者が約束したことは私の預かり知るところではない」と暗に言っているかの如く,株主の還元方針を反故にして,実際にこれで大きな損失を被り,そんな日本マーケットがほとほと嫌になり,もう日本株投資はしないと決めています.

さて増配に話を戻すと,企業が増配を続ければそれだけ投資の回収が早くなるので,増配が投資回収率をブーストして回収期間を短くしてくれます.

私のPGを例に挙げてみます.

2018年に投資回収率が落ちていますが,ここで追加投資をしたためですが,このタイミングよりも前の前半7年間の投資回収率の年間改善幅は平均で2.5%で,後半の5年間の平均は3.8%と前半の1.5倍です.

PGの増配継続によって,投資回収のスピードが年々早まっていて,直近の配当ベースでは5%の年間改善幅にまで膨らんでおり,あと10年ほど保有していたら本当に配当だけで投資を回収できるかもしれません.

投資回収のまとめ

配当で投資を回収するには時の試練が必要ですが,増配が回収率をブーストして回収期間を短くしてくれます.

配当には税金がかかるので,バフェットを始めとして配当にはネガティブな印象を持つ投資家も多いですが,配当で利益が実現すれば,それがパフォーマンスを下支えしてくれますし,配当再投資によって複利効果が働くので,やはり配当はかなり魅力的です.

長い時間をかけて配当と仲良くなる,私はこの投資スタイルを貫きます.


では,また.

Posted by Econ