投資の初速ベクトルを最適化して今に導いてくれた本

2023年11月18日おすすめ投資本

長期投資家なら必ず読むべき本,いわゆるバイブルというものが何冊かありますが,その中でも『敗者のゲーム』は四天王級の扱いで,この記事ではその『敗者のゲーム』についてレビューします.

これまで定期的に何度か読み返している本で,一度レビュー記事を書いたことがありますが,ボツ記事にして以来書けていなかったので,遅ればせながら改めてレビュー記事を書いてみました.

初読の方にはもちろんオススメですが,読む時の自分の状況や投資経験に応じて投資において大事なことや新しい視点に気付かさせてくれる名著ですので,既読の人も何度も読み返した方がいい本です.

来年から新NISAも始まるので,この記事を読んで,未読の方が『敗者のゲーム』に興味を持ったり,既読の方が読み直してみて,自分の投資方針を再確認してみるきっかけになれば幸いです.

『敗者のゲーム』は投資の初速ベクトルを最適化してくれた

『敗者のゲーム』は投資の初速ベクトルを最適化してくれた
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私が『敗者のゲーム』を初めて読んだのは社会人になりたての頃でしたが,この本のおかげで投資の好スタートを切れました

私は奨学金という名の借金を背負って大学に通っていて,大学を卒業したら速攻で返済すると心に誓っていたので,自分で稼ぐようになって周りの同期が好きにお金を使う中,私は奨学金返済に全力で注ぎ込み,卒業から1年で完済しました.

ちょうどこの頃に『敗者のゲーム』を並行して読んでいて,「奨学金を完済したら,少しずつでもインデックス投資を始めるぞ!」と思っていたので,奨学金完済後に,確か毎月1万円とかの少額を全世界インデックスファンドに積立投資をして投資デビューしました.

振り返ると,投資を本格的に始める前に『敗者のゲーム』を読んでいてインデックス投資から始められたというのはとても運が良かったと思いますし,願わくば,この記事を読んでくださっている方の中にも同じ境遇の方がいればと思います.

なぜなら,もし『敗者のゲーム』を読まずに個別株投資で投資デビューをして,大きな損失を出して「やっぱり投資は怖いからやめておこう」とデモチしていたら,今のように投資を継続できていたかわからないからです.

もしそんなことになって,「銀行預金残高が増えていくのを見るのが趣味」みたいなスタンスになっていたら,おそらく資産は今の半分にも届いてないでしょうし,毎月得ている配当もほぼゼロだったかもしれず,ゾッとします.

『敗者のゲーム』が投資の初速ベクトルを最適化してくれたおかげで,これまで15年近く投資を継続することが出来ました,これからもことあるごとに読み返すことは確定です.

『敗者のゲーム』のポイント

『敗者のゲーム』のポイント
Image by Aaron Burden from Unsplash

本のポイントは読む人にとってそれぞれですが,私がポイントと思うのは次の3つです.

  1. 市場(マーケット)には勝てない
  2. 市場タイミングを狙うのは無理ゲー.市場に参加し続けろ
  3. 投資運用方針を文書化し,定期的にアップデートせよ

それぞれ見ていきます.

市場(マーケット)には勝てない

単発でマーケットに勝てることはあるかもしれませんが,長期的にマーケットに勝ち続けるのは無理です.

マーケットに勝つのを目標にしている投資家もいますが,「そもそも投資はプラスサムゲームなので,市場平均と同じリターンを稼げていれば勝ち」なので,そもそもマーケットに勝つ必要などないというのが私の認識です(この点,著者のチャールズ・エリスは違っていて,彼は手数料を含めると投資はマイナスサムゲームだと言っています).

マーケットに勝つのがどれだけ無理ゲーかというお話ですが,市場の取引の大半はプロ,つまり機関投資家によってなされていますが,その機関投資家は,

  • あらゆる証券会社のどんなアナリストからも常にサービスを受けられるし,ブルームバーグをはじめ,ウォール・ストリートのあらゆるメディアから最新の情報が常に流入してくる
  • アイビー・リーグ出身のベテラン投資家を多数抱えていて,彼らがそのような圧倒的な量と質の情報を四六時中こぞって分析している

のです.

どうでしょうか?勝てる気はしますか?

少なくとも私は,レベル1でオメガウェポンに立ち向かうようなもんかなと思うので,個別株を自分のポートフォリオのメインに据えることは考えていません.

市場タイミングを狙うのは無理,市場に参加し続けろ

株式投資で成功するには「安い時に買って高い時に売る」と言われますが,それを狙ってできると思っている投資家はいないでしょうし,もしいるとしたらはっきり言っておめでたいです.

「あの時が相場の底(山)だった」というのはいつだって結果論,最近の例で言えばコロナショック(2020年3月)の時に仕込んで,ピーク(2021年12月)に売っていれば大儲け,ですが,これが出来た投資家がどれだけいたか.

私も当時のセンチメントは覚えていますが,コロナショックの時はサーキットブレーカーが発動しまくっていて,あのジム・クレーマーですらMad Moneyの中で「今回はマジでヤバイ」とつぶやいていて,いつ下げ止まるかを見通すなんて無理でした.

私もこの時期,当時積み上がっていた現金をVTIに投資していますが,「もしかしたらまだ下がるかもしれない」という不安と隣り合わせで,「今が底だから大丈夫」なんていう楽観的な気持ちは全くなかったです.

一方のピーク時は「レバナスに突っ込んでおけば勝ち」という思想が蔓延していて,「レバナスは危険なので手は出さない」という認識は保っていたものの,あの時が相場のピークだったというのは当時は当然のことながら想定していませんでした.

以上は私の個人的な経験ですが,マーケットタイミングを図ることは無駄というのはチャールズ・エリスも述べています.

私の手元にあるのが第2版なので,データがちょっと古くて恐縮ですが,1982年から2000年の18年間におけるベストの上昇日10日を逃すと,リターンは17%も低下することが実証されています.

18年間のうちの10日間は率にして0.25%,これを狙って売買する千里眼はパウエル議長や植田総裁ですら持ち合わせていないでしょうし,いわんやしがない個人投資家をや,です.

であれば,取れるアクションはただひとつ,タイミングなど狙わずにマーケットにエクスポーズし続けることです.

投資運用方針を文書化し,定期的にアップデート

投資で一番難しく,かつ大切になってくるのは財務分析や企業分析よりも感情のコントロールです.

マーケットとともに一喜一憂して,狼狽売りや追随買いをしていては投資の成果は見込めません.

そのために,

  1. どれだけのマーケットリスクを受け入れるか
  2. マーケット環境が変化した時,そのリスク水準を維持するか,変更するか
  3. 個別株式のリスクを引き受けるべきか.その際は,追加収益率の期待はどれくらいか.
  4. どのようなポートフォリオを構築しようとしているか
  5. 実行のタイミング・期限はいつか
  6. なぜ,この運用方針がリターンをもたらすと考えられるか

等を投資運用方針として文書化しておくと,いざという時に無謀なアクションを取らないように防波堤の役割を果たしてくれます.

本書では,投資運用方針は年に一回,継続的に更新していくことが勧められていて,私は毎年末に翌年の投資運用方針を定めています.

過去の運用方針を見返してみると,「あの時はこんな事を考えていたのか」と振り返れて結構面白かったりします.

まとめ

以上,『敗者のゲーム』を紹介しました.

投資のバイブルの代表格ですし,私自身もオススメ投資本を聞かれたら必ずこの本は挙げるでしょう.

未読.既読に関わらず,新NISAが始まる前に今一度読み返してみて,自分の投資方針を再確認してみるといいかもしれませんね.


では,また.

Posted by Econ