【VISA 2024決算】純利益60%を超える収益力 世界的決済ブランドによる圧倒的競争優位性

銘柄分析VISA(V)

Mastercardと双璧をなすクレジットカードの決済ブランドVISA,おそらく,読者の方のお財布にも1枚はVISAのクレジットカードが入っているのではないでしょうか.

そんな世界的ブランドのVISAが2024年度の決算を発表したので分析してレポートしてみました.

VISAのビジネスモデルや基本的な財務情報に対するコメントを載せていますので,VISAへの投資を考えている投資初心者の参考になれば幸いです.

VISAのビジネスモデル

VISA Form 10-K より抜粋

何はともあれ,まずはビジネスモデルの理解からですが,一番のポイントはVISAはクレジットカードを発行していないという点です(ちなみに,MastercardもVISAと同じビジネスモデルです).

文章で説明するよりも同じカードブランドとして名高いAMEXと比較するのがわかりやすいと思います.

VISAとAMEXのビジネスモデル比較

VISAとAMEXのビジネスモデル比較

項目VISAAMEX
ビジネスモデル決済システム運用し、利用料や手数料を得る決済システムとクレジットカードを発行し、手数料・年会費・金利を得る
メリットカード発行者ではないのでクレジットリスクを負わないカード発行者として年会費や金利収入を得られる
デメリットカード発行に伴う収益(年会費・金利)が得られないクレジットリスクを負う

AMEXが自社でカードを発行しているのに対してVISA(とMastercard)は自社でクレジットカードを発行しておらず,VISANETという独自の決済システムを提供することで利用料や手数料を収益として得ています.

VISAというとクレジットカードブランドのイメージがありますが,決済ブランドなんですね.

自社でクレジットカードを発行しているわけではないのでカードの年会費やリボ払いの金利を収益と出来ない点がAMEXと違いますが,一方でカード利用者のクレジットリスクは負わなくて良いのは安心できます.

VISAの売上と利益 昨年比較で順調に成長

まずは主要項目を前年度と比較してみます.

2024年度2023年度増減 額/率
売上高35,92632,6533,273 / 10.0%
営業利益23,59522,663932 / 4.1%
純利益19,74317,2732,470 / 14.3%
希薄化後EPS$9.73$8.28$1.45 / 17.5%
単位:百万ドル

売上,利益ともに昨年より増えていて,EPSも増加しており,特にEPSは株価に直結しますが,それが17.5%も伸びているのは心強いです.

今は世界的にインフレが進んでおり,かつしばらく続きそうですが,そうなると取引量が同じでも決済額が大きくなるVISAにとっては売上増加につながり,インフレと相性のいいビジネスモデルと言えるかもしれません.

VISAの主要財務指標 圧倒的な利益率

VISAの財務指標で特筆すべきは圧倒的な利益率で,2024年度の数字を挙げると

  • 営業利益率:65.6%
  • 純利益率:55%
  • ROE:50.5%
  • ROA:20.9%
  • CFマージン:55.6%

業種よるものの,純利益率が10%を超えていれば一般には儲かるビジネスと言えますが,VISAの純利益率は55%,売上の半分以上が利益というのは驚異的ですし,それに呼応するようにROEとROAがそれぞれ約50%,20%とこちらも超高収益体質です.

VISAは私が知る限り一番の高収益体質企業で,マイクロソフトでさえも営業利益率は40%前後で,ROEも35%から40%前後を維持しているという感じなので,その収益の高さがわかります.

そして,決済システムという大規模投資が必要なビジネスへの新規参入は難しく,バフェットの言う深い「経済的な堀(Economic mort)」が出来上がっており,今後も競争優位性をキープするのではないかと思います.

財政状況を見ると,長期負債が約208億ドルあり,負債資本倍率(Debt Equity Ratio)は140%と一見高いですが,既に書いたように圧倒的な高収益体質で197億ドルという純利益を叩き出しており,1年の純利益で長期負債をほぼ支払えてしまう財務の健全性ですし,CFマージンが55%もあるので売上から潤沢なCFが流れ込んでいて流動性にも懸念は小さそうです.

VISAの株価

2024年11月15日のVISAの株価は309.64ドルとなっていますが,1年前の株価を基準として,半年前,1ヶ月前,そして現在の株価がどうなっているかを見てみました.

S&P 500をベンチマークにしていますが,1ヶ月前くらいまではS&P 500の伸びに対しては緩やかでしたが,今回の決算が好感されて株価が上がり,ここ1ヶ月で一気に迫ってきています.

最新株価で計算するとPERは約32で,確かに高収益は魅力的ですが,ちょっと割高なのが正直なところで,現在の株価水準では調整相場が来たときなどに損失を被るリスクがありそうですが,財務体質は健全ですし,魅力的なビジネスモデルを持つ企業なので,タイミングを見つけて買い増していきたい企業なのは間違いありません.

Posted by Econ