理論を実践する 統計学の知識とPythonで将来の配当を予測

配当Python

投資家なら「将来どれくらいの配当(不労所得)が得られるか」と誰しも一度は考えるでしょうし,私は記録やExcelに残していないちょっとした想像や計算を含めたらおそらく100回は軽く超えてます.

2011年から配当収入が始まって,そこから14年間の配当データを持っていますが,将来の配当シュミレーションに,過去の配当の平均成長率を使ったり,またある時は平均成長額で試算したり,色々とやってきました.

この記事では,統計学の回帰分析という手法を使い,将来の配当金額を4つのケースでシュミレーションしてみましたので,皆様が将来の配当を予測計算する時の参考になれば幸いです.

ステップ1:今年の予定配当を計算

今回のシュミレーションは4ステップに分かれていてます.

  1. 今年の予定配当を計算
  2. 各年の配当をプロット
  3. 回帰分析でシナリオごとの増配額を計算
  4. 3に基づいて将来の配当額を計算

まずは2023年の配当実績と2024年8月末までの配当実績から2024年の年間予定配当を計算します.

直近の配当変化が将来の予測には一番大事なので,ここは大切なステップです.

  • 2023年1月から8月末までの配当:約45.2万円
  • 2024年の同じ期間の配当:約59.4万円

ここから,2024年は2023年に比べて配当が31.4%アップするという仮定を置きます(=59.4万円/45.2万円).

そして,2023年9月から12月の配当額が約37.3万円だったので,計算したアップ率をもとに計算すると,今年の9月から12月の期待配当は約49万円となり,合計すると今年の期待配当は108.4万円です(=59.4万円+49万円) .

ちょっと余談ですが,以上見たように,今年には年間配当が100万円を超える見通しで,やはり100万円は大きな節目なのでこれはテンション上がりますね.

ステップ2:各年の配当をプロット

年間配当額のグラフ(2024年は想定値)

上の折れ線グフが私の年間配当のグラフで,この14年間,配当は毎年増加していますが,2020年あたりを境に毎年の配当増加が加速しているのがわかります.

ここ数年は配当の出ないインデックスファンドを中心の投資なので,配当増加にはブレーキがかかるはずですが,それでも増加しているのは配当王銘柄による増配の継続が大きいです.

私は

  • P&G(PG)
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)
  • コカ・コーラ(KO)
  • 3M(MMM)

という4つの配当王銘柄を保有していますが,他の銘柄に比べて保有の安心度合いが違います.

例えば,3Mは買値の約半分まで株価が下落した時期がありましたが(今では買値の75%までに戻りました),それでも不安は少なく,「まぁ,長期的に配当で少しずつ回収すればいいか」という気持ちで保有し続けられました.

また,P&Gの配当は購入時の2倍に成長し,既に投資額の約半分を配当で回収済みで,生活必需品セクターという特性を考えると今後の増配も固いのを考えると,10年以内には配当だけで投資額の全てを回収できそうだと目論んでいます.


ちょっと脇にそれましたが,2020年を境に傾きが変わっているのを考慮して,

  • 全期間の平均(ニュートラルケース)
  • 前半の傾きが緩やかな期間(保守的ケース)
  • 後半の傾きが急な期間(積極的ケース)

の3つのシナリオで回帰分析してみます.

ステップ3:回帰分析

上に挙げた3つのケースを回帰分析していきます.

回帰分析というと難しく聞こえますが,要するに過去の配当実績を一次関数で近似すると,最も近い傾き(年間の配当増額)はいくつかを計算するものです.

回帰分析の理論は統計学の教科書でポイントをしっかり押さえる必要がありますが,理論のポイントを押さえたら,後はそれをガシガシ使って実践するのが大切ですね.

今回はPythonのPandasとscikit-learnという2つのライブラリを使って回帰分析してみました.

全期間の平均:ニュートラルケース

配当実績と回帰直線(全投資期間ケース)

まずは投資を始めた2011年からの全期間で回帰分析したケースです.

グラフの青線が実績,オレンジ線がそれらを近似した回帰直線で傾きは6.83,つまり年間配当は6.83万円ずつ増えるという分析です.

決定係数と言われる R2 が0.812で,これは1に近いほど回帰直線の傾きが実際のデータを近似していることを意味しますが,0.812は悪くない当てはまり度合いかなという感じですね.

増配が緩やか:保守的ケース

配当実績と回帰直線(投資前半ケース)

続いて投資を始めた前半期間(2011年 – 2020年),年間の増配がまだ緩やかだった頃を回帰分析してみます.

すると,年間配当は3.43万円ずつ増加していくという分析になり,この場合,決定係数は0.992です.

決定係数0.992というのは回帰直線がほぼほぼ実績を説明できているということですが,これはグラフを見ても明らかで,オレンジの回帰直線が実績とほぼ重なっているのがよくわかります.

増配が急:積極的ケース

配当実績と回帰直線(投資後半ケース)

最後に,年間の増配が加速し始めた直近数年(2021年 – 2024年)で回帰分析してみます.

すると,年間配当は22.27万円ずつ増加していくという分析になり,この場合の決定係数は0.997とほぼ1,グラフを見ても分かるように,オレンジの回帰直線が実績とほぼ一致しています.

ステップ4:将来配当の試算

3つの回帰分析をしましたが,既に直近数年間で2桁万円の増配を毎年確保しているのを考えると,+3.43万円/年の保守的ケースはあまりに保守的です.

積極ケースの+22.3万円/年が直近の実績からは一番現実に近いですが,シミュレーションは保守的であるべきなので,積極シナリオとニュートラルシナリオの平均を現実的(Realistic)ケースとして1つ追加しました,その結果が下のグラフです.

2035年(10年後)2045年(20年後)2055年(30年後)
積極的ケース353万円576万円799万円
現実的ケース268万円414万円559万円
平均ケース184万円252万円320万円
保守的ケース146万円180万円215万円

実際に10年ごとの想定配当額を見ても,保守的ケースの146万円というのは2, 3年後には超えるだろうと思っている金額なので,保守的を超えてもはやラガードです.

直近の増配ペースを鑑みると,現実的ケースは可能だと思っていて,それによると10年後の配当は268万円で,経済的自立に向けた力強いエンジンになってくれそうです.


持論ですが,シュミレーションは,その通りになるかどうかより,それがモチベーションアップに繋がるかが大事だと思っています.

今回のシュミレーション結果で投資を継続していくモチベーションがますますアップしたのは言うまでもないですね.


では,また.

Posted by Econ