コカ・コーラ (KO) vs ペプシコ (PEP)

2021年5月19日銘柄分析

コカ・コーラ (KO)とペプシコ (PEP)のどっちの株を買うか,米国株投資家ならきっと一度は迷う 1 と思います.
1 他にもビザ (V) vs マスターカード (MA),AT&T (T) vs ベライゾン (VZ),アメリカン・ステイツ・ウォーター (AWR) vs アメリカン・ウォーター・ワークス (AWK)など迷う銘柄はあります.AWRとAWKなんてティッカーシンボルまで似てますね

私はコカ・コーラ株は持ってますがペプシコ株は持っていません.
コーラはペプシ・コーラではなく断然コカ・コーラ派ですが,だからと言ってペプシコという会社が嫌いなわけではもちろんなく,コカ・コーラを持っているのにペプシコを買うのは分散投資の観点からあまり意味がないと思ってのことです.

ペプシコは食品事業もやっているので事業ポートフォリオの点からはペプシコの方が良く,むしろ「今買うならペプシコかもな」と思っているのですが,そのためにもコカ・コーラとペプシコの比較ををこの記事でまとめてみます.

主要経営指標の比較

コカ・コーラとペプシコの経営指標を2020年と過去10年の平均の2つでまとめたものが下の表です.

2020年はコロナの影響で世界的にスポーツやイベントが中止になり,映画館やテーマパーク,レストランも休業に追い込まれ,両社とも大きな影響を受けていますが見てみましょう.

コカ・コーラ vs ペプシコ 経営指標比較表 (百万ドル)

KO 2020PEP 2020KO 10年平均PEP 10年平均
売上高33,01470,37241,35665,667
営業利益率27.3%14.3%22.7%15.0%
純利益率23.5%10.1%17.3%10.6%
ROE 210.6%13.7%10.1%15.5%
ROA8.9%7.7%8.2%9.0%
自己株式調整済み負債比率90.1%152.6%86.7%134.7%
2 ROEとは自己株式を加算して計算しています

コカ・コーラでの気付き

両社の比較の前に,個別に気になった点を挙げてみます.

一言でいうと,コカ・コーラは経営の規模は追わずに質を高めているという印象を受けました.

売上高は2020年の数字が過去10年平均よりも約20%落ちていて,コロナの影響はあるがそれでも2019年と比較して10%ほどのダウンであることを考えると経営のライトサイジング化をしていると思われます.

ライトサイジング経営の影響か,営業利益率,純利益率とも過去10年の平均よりも2020年の方がよく,それぞれ27.3%と23.5%は素晴らしい利益率です.

ROEとROAの動きも連動していて,自己株式などで利益率を操作していない良い証拠で,自己株式調整済み負債比率を見ても10年平均 86.7% –> 2020年 90.1%とほぼ変わらずで,金融緩和による負債依存の企業が増える中で財務健全性を保っています
収益性,成長性など色々な投資尺度はありますが,私は特に財務健全性を重視するのでこの姿勢はとても好感が持てます.

ペプシコでの気付き

コカ・コーラが経営の質を高めているのに対してペプシコは規模で勝負している印象です.

まず,2020年の売上高は過去10年平均を7.2%上回っていて,順調にビジネスが成長しています.

その一方で2020年の利益率,ROE, ROAが10年平均から軒並み悪化しており,規模の拡大に収益性がキャッチアップできていないようです.

また,負債比率も10年平均の135%から最近は153%まで増えています.
153%は,今すぐに問題になる負債比率ではありませんが,1.5を超えて黄色信号という印象ですし,財務健全性が悪化しているのは懸念点です.

両社の比較

まずは売上規模の違いに目が行きます.
ペプシコは食品事業も展開しているのでコカ・コーラよりも売上規模は大きいと思っていましたが,2020年のコカ・コーラの売上が330億ドルに対してペプシコは703億ドル,2倍以上の差があるとは予想以上でした.
規模ではペプシコの圧勝ですね.

しかし,2020年でROE以外の収益性はコカ・コーラの方が良く,財務もコカ・コーラの方が健全です.

ビジネス概況

コカ・コーラは質,ペプシコは規模,という特徴は見えてきましたが,経営指標だけではどちらがいいと判断が難しいので,もう少し具体的なビジネス状況を見ていきます.

コカ・コーラ

コカ・コーラの飲料事業は

  • Coca-Cola
  • Sparkling Flavors
  • Nutrition, Juice, Dairy & Plant
  • Hydration, Sports, Tea & Coffee
  • Emerging

の5本柱です.

コカ・コーラが約半分を占める軸になっているのはイメージ通りですが,その他の柱もバランスが取れています.

  • Sparkling Flavors –> ファンタ,スプライト
  • Nutrition, Juice, Dairy & Plant –> ミニッツメイド
  • Hydration, Sports, Tea & Coffee –> ジョージア,アクエリアス

とそれぞれの柱でブランドがしっかり育っているのも強みです.

The Coca-Cola Company 2020 Annual Reviewsのデータより作成

左の円グラフは地域別の売上で,地域ごとの売上バランスがきれいに取れていて,コカ・コーラと言えばもっぱらアメリカというイメージがありましたが,世界中でコカ・コーラの製品がの飲まれていることがわかります.

コカ・コーラはESGへの取り組みも積極的で,Rain Projectという,きれいな水をアフリカの住民に提供する事業などにも取り組んでいます.

また最近の健康志向から,製品に含まれる砂糖を減らしたり健康にいい製品を出し始めています.

ペプシコ

Pepsico ウェブサイト及び2020 Annual Reportより

ペプシコがコカ・コーラと一番違うのは食品事業も展開している点です.
食品も展開していると言うより,食品 55%,飲料 45%と均衡しているものの,食品事業の方がメインになっています.

またコカ・コーラが全世界でバランスの取れた事業展開をしているのに対して,ペプシコは約6割がアメリカ,ヨーロッパが2割,南米が1割,中東・アフリカ,アジア大洋州がそれぞれ5%と,結構アメリカに偏った売上になっていることがわかります.

分析を始める前は「ペプシコの方がよさそう」と思ってましたが,こうやって見てみると「コカ・コーラの方がいいかも」と思っている自分がいます….

株価および投資指標

上のチャートは過去半年のコカ・コーラとペプシコの株価です.
2021年5月18日時点では,それぞれ上下している時期にばらつきはあるものの,ここ1, 2ヶ月の株価トレンドに大きな違いはありません.

コカ・コーラ vs ペプシコ 投資指標 (2021年5月19日)

コカ・コーラペプシコ
PER32.426.9
年間配当2.064.03
配当利回り3.8%2.8%
配当性向123%74.5%

配当利回りはコカ・コーラが3.8%で魅力的ですが,配当性向が123%,つまりEPS以上に配当を出していて,タコが自分の足を食べているような状況です.
当然これは持続可能な状況ではないので,今の状況が一時的にせよ,この不健全な状況はコカ・コーラの懸念です.

なお,コカ・コーラは58年連続で増配を続けている配当王銘柄の1つです.
配当王についてはこちらの記事で詳しく分析していますのでもしよければ併せて読んでみてください.

一方ペプシコの配当利回りは2.8%,コカ・コーラには見劣りするもののまずまずの数字 3ですし,75%の配当性向も健全です.

3 配当利回りは高い方がリターンは大きいですが,その分持続可能性にリスクがあるので私は配当利回り3%前後が安全ゾーンだと思っています.1年くらい前はHSBCやロイヤル・ダッチ・シェルが6%以上の配当利回りで人気がありましたが,大幅な減配や無配になったというケースは,米国株投資家は覚えておいた方がいいですね.

また,PERはペプシコが25を超えてコカ・コーラが30を超えており,ともに割高感が目立つので,今の株価水準では慎重になったほうがいいかもしれません.

まとめ

コカ・コーラ,ペプシコをそれぞれキーワードでまとめると

  • コカ・コーラ:経営の質向上,バランスの取れたビジネス
  • ペプシコ:経営の成長,広範囲なビジネス

と言えます.

数字やビジネス概況で見るとコカ・コーラの方が良さそうに見えますが,食品事業はコカ・コーラにないペプシコの魅力です.

同じ生活必需品セクターですが,この食品事業という点でコカ・コーラと差別化できているので,いつかペプシコを買いたいと思っています.

Posted by Econ