野村総研の金融資産分布調査2021年版から見えたこと
みんな大好き,野村総合研究所(NRI)の金融資産分布調査の2021年版が公表されました.
私も非常にお世話になっているトピックで,このブログでも何度か取り上げたことがあります.
2年ごとに公表されて通常のスケジュールなら偶数年の12月頃に発表されるのですが,3ヶ月たっても発表されないから打ち切りになったと思っていたのですが,3月始めに公表されました,良かった良かった.
さて,2021年における資産階層はどうなったか見ていきましょう.
自分がどこに位置するかが一番気になりますが,掘り下げていくと面白い発見が盛り沢山です.
- 各階層の構成比率はほぼ変わらず.
- 富裕層の増加割合が大きく,準富裕層は減少.準富裕層から富裕層へ「億り人」となった人が多かったと考えられる
- 階層ごとの世帯平均金融資産は富裕層で減少.富裕層の上位階層が超富裕層へ移行し,準富裕層から「億り人」となった世帯が多く流入してきたためと考えられる
- マス層とそれ以外の階層の資産格差が徐々に広がりつつある.アッパーマス層と準富裕層は投資をしているが,マス層は預貯金に資産が偏在か
金融資産階層の構成割合
各階層の構成割合は2019年から大きく変わっていません.
- マス層(純金融資産3,000万円未満)が約80%の圧倒的多数
- アッパーマス層(3,000万円以上,5,000万円未満)が10%強
- 準富裕層(5,000万円以上,1億円未満)が約5%強
- 富裕層(1億円以上,5億円未満)が約2, 3%
- 超富裕層(5億円以上)が0.2%
という棲み分けは,調査が始まった2005年からほぼ変わらずです.
純資産が2,000万円以上でアッパーマス層の背中が見えてる人はこのパイチャートを見てこう思ったのではないでしょうか.
「もうすぐアッパーマス層なのに,なんで最下層のマス層に押し込められなきゃならないんだよ.純資産100万円と2,800万円じゃ全然違うだろ.納得いかないなー」
そんな人は下の関連記事でマス層をさらに細分化してみたので合わせて読んでいただければ嬉しいです.
私も,80%のマジョリティを1つのカテゴリーに押し込め,残りの20%を4つに細分化するカテゴリー分けは歪だと思いますし,マス層の括りはかなり不満を持っていたので,アッパーマス層から準富裕層になった時よりも,マス層からアッパーマス層になった時のほうが嬉しかったですね.
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金融資産階層ごとの増減
各階層の構成割合は大きく変わっていませんが,階層ごとの増加割合を見ると,変化があることがわかります.
特に目立つのは
- 富裕層が12.5%も増加
- 準富裕層は4.8%減少
で,これは「億り人」となり,準富裕層から富裕層に移行した人が多かったためと考えられます.
各階層の世帯平均純金融資産を一緒に考えるとよくわかります.
富裕層の世帯あたりの純金融資産は約1.86億円で,前回調査の1.9億円からわずかですが減少しています.
これは富裕層のお金が減ったと考えるのではなく,
- 前回の調査で富裕層の上位にいた世帯が超富裕層の仲間入りを果たして人生上がった
- 前回準富裕層の上位にいた世帯が億り人となり,富裕層に多く入ってきた
- 上が少し抜け,下に多く入ってきたことで,世帯平均が下落した
と考えられます.
また,もう一つ気になるのは,マス層とそれ以外の階層の資産格差が徐々に広がりつつあることです.
分かりやすいように,準富裕層,アッパーマス層,マス層で比較したグラフを載せます.
マス層の世帯平均純金融資産は調査開始の2005年からずっと1,500万円前後をウロウロしており,ほとんど伸びていませんが,一方のアッパーマス層と準富裕層は年によって多少の増減はあるものの,基本的には右肩上がりの傾向です.
2009年にアッパーマス層と準富裕層で資産が減っているのに対してマス層で減っていないのを見ると,アッパーマス層と準富裕層では投資をしている人たちが多い一方で,マス層は預貯金に資産が偏在しているのではないかと思います.
「資産を増やすには投資しかない」なんて言うつもりはないですが,妥当なリスクの範囲で時間をかけて育てることで,かなりの確率でリターンが見込めるのが投資です.
自分の資産を育てていきたいという思いがあるなら,投資は必要だと思います.
ちなみに,「大金持ちがいると上に引っ張られるから資産の平均なんて意味ない.考えるなら平均じゃなくて中央値だろ」という指摘がありますが,この調査では超富裕層以外は資産額の下限と上限が決まっているので,資産の平均値は有用な指標になりますのでご安心ください(厳密にはマス層も純金融資産がマイナスの下限なしですが,影響は小さいと思うので省きます).
金融資産調査2021のまとめ
2021年の金融資産ピラミッドを見てきました.
億り人というワードが使われ始めたように,準富裕層から富裕層の仲間入りを果たした世帯が多かったというのがトピックでした.
ただ,今回調査の2021年は
- レバナス一本に投資しておけば間違いなし
- 米国株をやらないなんてありえない
というくらいの強気,というか投資家が調子に乗っていた相場で,資産額という意味では多くの人にとってベストな時期だったと思います.
次回の調査は2023年,これを書いている3月時点では,
- 年後半から米国経済がリセッション入りするのはほぼコンセンサス
- 収まらないインフレ,上がり続ける金利
- SVB破綻による影響連鎖の懸念
などなど,2021年より経済が厳しい年になるのはほぼほぼ確定な気がしますし,そうなれば2009年の調査のように全体に下方圧力がかかるんではないかなと思います.
答え合わせは2年後に.
では,また.
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