マス層(金融資産3000万円以下)を細分化してみた
金融広報中央委員会の『家計の金融行動に関する世論調査 2022』によれば,日本の家計(2人以上世帯)の資産の平均は1,291万円,中央値は400万円です.
となると,例えば資産2,000万円の家計は中央値の5倍,平均値よりもだいぶ上にいるので,日本の家計の中では上位に入るはずです.
しかし,野村総合研究所(NRI)の金融資産ピラミッドではマス層という,最下層に押し込められています.
私は特に自分がアッパーマス層に近づいている時「なんで上位20%のカテゴリーを4つに細分化して,下位80%のマジョリティをマス層に押し込めてんの?」とNRIのカテゴライズにかなり不満でした.
金融資産3,000万円に近い家計と言えばそれなりに余裕のある家計ですが,それでも最下層のマス層に括られたら「アッパーマス層に近い資産を持っているのに,何で資産ゼロの家計と同じカテゴリー扱いなの?」と不満に思うのが普通ではないでしょうか.
そこで,特にアッパーマス層に近い金融資産を持っている人のフラストレーション解消とモチベーションアップのために,マス層を5つに細分化してみましたのでご笑覧くだされば幸いです.
マス層に日本の家計の80%を押し込める不合理
マス層細分化の前に,80%のマジョリティをマス層という1つのカテゴリーに押し込める不合理について書いてみます.
準富裕層(金融資産5000万円以上,1億円未満)の資産5500万円と7900万円の家計の場合,資産規模は2400万円違いますが,どちらも家計にはかなりの余裕があり,余裕度や生活水準という点ではあまり差はありません.
しかし,同じ資産規模の違い2400万円で考えると,資産100万円の世帯と2,500万円の世帯は定義上同じマス層ですが,家計の余裕度は全然違います.
2500万円の世帯は家計に余裕があるので,怪我や病気,家電の買い替えなど,急な出費があっても対応できますが,100万円の場合はそうしたまとまった出費に対する余裕はありません.
また,100万円と2,500万円の世帯は生活水準もかなり違うはずで,たとえば私の経験では,資産100万円レベルでは贅沢をする余裕はなく,家具はIKEAで揃えたり食器は100円ショップで買っていました(決してIKEAや100円ショップが悪いというわけではありません).
それが資産規模2500万円になる頃には,無垢材の家具を買ったり,リーデルのワイングラスでワインを飲むなど,100万円の頃に比べて生活水準は全く違いました..
やはり,家計の余裕度や生活水準という点からもマス層は細分化すべきです.
エマージング層:金融資産 100万円未満
まずはエマージング層で,これは資産運用を始める前の層です.
資産100万円未満はちょっとしたことで家計が行き詰まるリスクがある脆弱な状態です.
なので,エマージング層に必要なのは何はともあれ貯蓄です.
節約,貯蓄のサイクルを回して手元に貯蓄が積み上がれば,多少の変化にも耐えられる家計になり,それが精神的余裕をもたしてお金の心配をすることが減ります.
ちなみに,ここで言う資産は純資産なので,住宅ローンを差っ引いた後の資産規模が100万円未満ならエマージング層です.
ここからは私見も入り余談です.
「低金利状態なので繰り上げ返済はせずに投資に回してリターンを稼いだほうがいい」と言って,住宅ローンを負いながら投資をしている人も多いですが,これは状況がうまくいっている時はいいですが,サイクルが逆回転すると一気に崩壊する危険な状態です.
変動金利の上昇シナリオが最近話題ですが,金利がいつ,どれだけ上がるかは誰にも予想できませんが,金利上昇でローン負担が重くなるというシナリオは十分ありえます.
というか金利がこれ以上下がるというシナリオはないでしょう.
低金利なので繰り上げ返済せずに運用したほうがいい,と言っている人たちは,仮に変動金利が今後上がって金利負担が増えても,「銀行は晴れの日に傘を貸して雨の日に傘を取り上げていくひどい連中だ」なんてことを言う資格は全くないことだけは肝に銘じてほしいと思います.
また,資産は簡単に価値が下がりますが,負債は支払わない限り減ることはないので,投資に失敗したり住宅ローンが払えなくなって,マーケットから退場しても住宅ローンの残債,なんてなれば目も当てられません.
エントリー層:金融資産 100万円~500万円
20代後半のシングルや新婚夫婦がこのエントリー層に該当します.
エントリー層の世帯はエマージング層からさらに貯蓄を厚くして,一年間の生活費を確保することが第一歩になります.
生活費を確保しないで投資を始めると,下落時に安値でパニック売りという投資では一番やってはいけない行動に走りがちです.
しかし,投資資金とは別に一年間程度の生活費が確保できていれば,多少の下落にも耐える精神的余裕が生まれて冷静な投資ができるようになります.
私も1人目の子どもが生まれてから2人目の子どもが生まれるまでの期間がちょうどこのエントリー層でしたが,毎月の貯蓄の80%くらいを現金として確保して,残り20%を投資に回して,一年間の生活費が確保できてから本格的に投資に取り組み始めました.
スターティング層:金融資産 500万円~1000万円
資産500万円以上を現金で確保できれば,支出が多い世帯でなければ,一年間の生活費は確保できている状態です.
そうなれば本格的に投資を開始する段階ということで,スターティング層と名付けました.
私はスターティング層にいる期間は約1年と短かったのですが,まずは米国株インデックスファンドをドルコスト平均法で買って投資に慣れることから始めました.
また,簿記や会計の知識を生かして財務分析で企業の定量評価をしたり,バフェットの投資本を読んで定性評価をして個別株投資を始めたのもここからです.
20代でスターティング層に到達できれば,時間はかかるかもしれませんが,複利の効果でアッパーマス層から準富裕層そして富裕層と将来的には盤石な資産を築くポテンシャルは十分です.
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ミドル層:金融資産 1000万円~2000万円
ミドル層になると資産額が1,000万円の大台に乗るので心理的には大きな節目になります.
ミドル層レベルの資産規模になると投資の選択肢も広がりますが,資産が1000万円の大台を超えると,資産を増やしていくことはもちろん大事ですが,同時にいかに資産を守るかも考えなければならなくなります.
これまでは資産を増やす攻めの資産運用がメインでしたが,資産を減らさない守りの資産運用も取り入れて攻めと守りのバランスを取る必要が出てきます.
冒頭書いたように,日本の家計(2人以上世帯)の資産の平均は1,291万円,中央値は400万円なので,おそらく日本の世帯の50%強がミドル層以下に属すると推測しています.
なので,ミドル層であればマス層では中の上と言え,ここまでくればアッパーマス層が見えてきます.
ステイブル層:金融資産 2000万円~3000万円
ステイブル層になれば,多少の社会・経済の変化に対してもかなりのレジリエンスを保てます.
このレベルになると,その上のアッパーマス層が射程圏内に入るので,アッパーマスになりたいというモチベーションからマネーリテラシーに興味がでてきます.
また,お金持ちマインドが芽生えてきて価格と価値を考えるようになり,価値があるものには惜しみなくお金を使う一方で価値がないものはビタ一文支払わないというマインドに変わってきます.
2019年に老後2000万円が問題になりましたが,住宅ローンを完済してステイブル層の純資産額で定年を迎えれば,贅沢は出来なくても生活に困窮することは避けられます.
金融資産3000万円以下のマス層についてのまとめ
以上,マジョリティのマス層を細分化してみました.
区切りの数字は単に便宜上のもので数字に根拠はありませんが,特にアッパーマス層に近い金融資産を持っている人のフラストレーション解消とモチベーションアップになれば嬉しいです.
NRIの調査結果は自分の相対的な位置がわかって面白いですし,私も楽しみにしていますが,こだわりすぎはNGです.
早くマス層から抜け出したくてリスクの高い投資ばかりするくらいなら,このカテゴリー分けの話題はスッパリ忘れてしまったほうが健全な資産運用ができます.
資産運用や家計のライバルは過去の自分であって,他人ではありません.
ゆっくり,着実にお金持ちを目指しましょう.
では,また.
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