『仮説は反証により検証せよ』 賃貸・持ち家論争を確証バイアス回避トレーニングに利用する
自分の意見に合うコンテンツを見つけるのは簡単で,精神的にも心地良いですが,このような行動ばかり取っていると,投資やマネーの分野では失敗する確率は上がります(投資・マネーの分野に限った話ではないですが).
人間にはそもそも,自分の意見に合った情報だけを探そうとする確証バイアスがあり,これが自分の考えや主張に似た意見ばかりを目にするようになる,いわゆるエコーチェンバー現象に繋がります.
「自分と合わない意見を見て,わざわざ不快になる必要もない」というのも理解できますが,エコーチェンバー現象は思考の柔軟性を損ない,年齢を重ねるとただでさえ頑固になりがちなので,最近はトレーニングの目的も兼ねて,自分の主張に異を唱えるコンテンツを積極的に見るようにしています.
「仮説は反証により検証せよ」,カール・ポパーが唱えた反証可能性の教えですね.
確証バイアス回避のために,あえて自分の意見と違うコンテンツを見る
そんな中,先日とあるメディアで「賃貸派は情弱,賃貸派の意見に反論する」というコンテンツを視聴しました.
私は,
- 価値観と将来の夢
- 今の家賃
- 今後の金利動向
- 日本という国の将来性
などを考慮して自分なりにそろばんを弾いた結果,賃貸の方が金銭的メリットがあると判断して賃貸を選択していますが,持ち家派はどんな理由で持ち家に金銭的に軍配を上げているのか興味がありました(一国一城の主になりたいなど,心理的な理由は除きます).
そのコンテンツでは7,8個の理由を挙げて賃貸のデメリット(持ち家のメリット)を主張しており,そのうちのいくつかをピックアップすると
- 「定年まで賃貸で,定年時に現金一括の方が金銭的メリットがある」という賃貸派の主張に対して,そもそもそれができるのか計算してからモノを言え
- 「借金(住宅ローン)が嫌」という主張に対して,そもそも生きていく限り食費などを支払い続ける必要があり(=借金がある),このような主張は借金の本質を理解しておらずナンセンス
- 持ち家なら,いざという時も購入価格の半値以上で売れる
ですが,私には
- 論理のすり替えではないか.「では,定年時に現金一括で買えるならその方がメリットがあるのか?」と問いたくなる
- B/S(負債)とP/L(支出)を混同している.住宅ローンという借金は将来の自分から前借りする行為であって,それは将来の自分の選択肢を狭め得る
- エビデンスなし.地方都市の戸建てでも言えるのか,と聞きたくなるし,必要な時に現金化できない流動性リスクもある.
と,色々と主張に対する疑問が残り,このコンテンツを見ても持ち家がいいとはなりませんでした.
むしろ賃貸の方が金銭的メリットがあるという自信が85%から88%くらいになりました.
自分の意見と違う意見に触れるメリット
こんな感じで,敢えて自分とは異なる意見に触れて
- それって仮定がおかしくない?
- エビデンスは?
- どうしてそういうロジックになるの?
- 他にもこういうアクション・選択肢があると思うけど
などのツッコミを入れることで,自分の考えに対する自信を深められますし,相手の主張が正しいと思ったら自分の考えをアップデートしていけばいいだけで,何も失うものはありません.
相手の主張を聞かずに「なんか自分の意見と違うことを言っている輩がいる」と見下すよりは健全なアプローチかなと思っていて,これからもどんどん自分の意見と異なる主張に触れていこうと思います.
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