【日本郵船(NYK)】2024年度決算と株価評価 トランプ政権の関税政策が重荷
GWが終わって一週間以上が経ちますが,GWは投資家にとって忙しい時期ですね.
というのも,日本の多くの会社は3月で年度を締め,そこから1ヶ月くらいかけて決算報告の準備をして,だいたいGWくらいに前年度の決算報告と今年度の見通しが発表されるためです.
先日の記事『【三菱商事】2024年度決算分析と株価評価』で,三菱商事の2024決算発表と2025年度の見通しを考察しましたが,この記事では同じく三菱系の日本郵船(NYK: Nippon Yusen Kaisha)がGW明けに同様の発表をしているので見ていきます.
2024年度決算
まず,収益に関する主要指標は次の通りです.
FY 2024 | vs FY2023 | |
---|---|---|
収益 | 2兆5,887億円 | +2,015億円 (+8.4%) |
純利益 | 4,777億円 | +2,492億円 (約2.1倍) |
純利益率 | 18.5% | +8.9 ppt. |
ROE | 20.4% | +9.5 ppt. |
増収増益,特に純利益は2倍以上になり,素晴らしい決算内容でした.
それに伴って純利益率,ROEも大きく改善し,純利益率18.5%,ROE 20%超えという数字は,優良米国株銘柄に匹敵する利益率で,業種にもよりますが日本でここまで高い利益率を出せる会社はそう多くはないと思います.
増収増益を受けて財務の健全化も進んでいます.
- 自己資本比率:54.3%(+5.2 ppt.)
- 有利子負債:6,190億円(-1,968億円)
有利子負債は社債と長期借入金の固定負債が微増ですが,2,000億円近くあった短期借入金が約540億円にまで減り,また2023年度に約530億円残っていたコマーシャル・ペーパー(CP)も残高がなくなり,トータルでは2,000億円近くの圧縮となりました.
短期負債の減少と有利子負債の減少がほぼ対応しているのは,財務権全面からだけでなく,資金調達の安定面からもいい流れと言えそうです.
2025年度見通しと株価評価
FY 2025 | vs FY2024 | |
---|---|---|
収益 | 2兆3,800億円 | -2,087億円(-8.1%) |
純利益 | 2,500億円 | -2,277億円(-47.7%) |
ROE | 8.8% | -11.6 ppt. |
2024年はいずれの指標も改善を示す青色でしたが,2025年度は減収減益予想で全て赤になってしまいました.
海運は昨今のトランプ政権による関税政策の影響が特に大きいセクターなので,仕方ないですね.
それを受けて2025年度の配当予定は235円/株と,2024年度の325円/株から90円の減配となりましたが,その一方で
- 配当性向:30%から40%に引き上げ
- 下限配当:100円から200円へ引き上げ
と方針を修正したので,ここから大きく下がるリスクも減りました.
私が日本郵船に投資をしたのは3月半ば,そこから程なくしてトランプ政権が関税政策を発表したことで,一時は4,200円台まで株価が落ちて,「マジかよ,やってくれたな…」という感じでしたが,決算発表時に新たに1,500億円の自己株式取得が発表されたことも好感され,株価はこの記事を書いている2025年5月16日の終値5,274円とだいぶ戻してきました.
予想PER:9.7,PBR:1.0と引き続き割安感が目立ち,私の試算ではまだ10%近い安全域を確保できている計算ですが,政策の不透明感が強いのでしばらくは様子見です.
しかし,海洋国家である日本にとってはなくてはならない,日本のフラッグシップですので,市況の見通しが改善したら買い増しを検討したい銘柄です.
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません