金投資を10年やってまとめた金投資マニュアル

金(ゴールド)

どうも,Econです.

米国株投資家の中で金(ゴールド)投資をしている人は多くないかもしれませんが,私は金投資を始めて10年以上になります.

その経験が金投資に興味を持っている人の役に立つかもしれないと思い,この記事では

  • 金のメリット・デメリット
  • 金の手数料を抑える方法
  • 金の役割とポートフォリオへの組み込み方

についてまとめました.

金投資のメリット

金のメリットは大きく挙げると次の2つです.

  • 金はそれ自体に価値があり,インフレに有効
  • 利益が出ても税制面で有利

インフレ対抗力

金はインフレに強いとはよく言われますが,それを理解するにはまず金利と金の関係を理解することが一番です.

図1 左:名目金利と金価格 真ん中:実質金利と金価格 右:インフレ率と金価格

図1の一番左はアメリカにおける過去20年間の名目金利をx軸,金価格をy軸に取ってプロットしたものですが,右肩下がりの傾向がわかります.
実際,相関係数は-0.66と結構強い負相関で,金利が上がると金価格が下がる傾向にあることがわかります.

なぜなら,金は金利や配当などのインカムゲインを得られないので,金利が高くなれば債券などで運用したほうが利回りが期待でき,金への需要が下がり,金の価格は下がりやすくなるためです.

ここまで読んで,「最近,アメリカの金利が上昇しているけど金価格は高いままなのはなんで?」と思った人もいると思います.

その答えは,「金価格と金利の関係を見る時,名目金利ではなく実質金利を見る必要がある」からです.

名目金利はインフレ率を加味しない金利で,それに対してインフレ率を加味した金利を実質金利といい,

実質金利 (Real Interest %) = 名目金利 (Nominal Interest %) ー インフレ率 (Inflation %)

で表され,金価格と金利の関係を見る時は実質金利を使うことが多いです.

なぜなら,金利はインフレを抑えるための調整弁の役割のため,インフレ率が高い時は名目金利も高く,インフレ率が低い時は名目金利は低くなることが多いためです.

図2 名目金利とインフレ率

上の図2は名目金利とインフレ率の関係をそれぞれx軸,y軸にプロットしたものですが,右肩上がりの傾向にあることがわかりますし,相関係数も0.521と正相関が確認できます.

実質金利で考えると,最近アメリカの金利が上昇しているけど金価格は高いままなのが説明できます.

図1(再) 左:名目金利と金価格 真ん中:実質金利と金価格 右:インフレ率と金価格


図1の真ん中は実質金利と金価格の関係をプロットしたものですが,今のアメリカは名目金利は上がっているがインフレ圧力も強まっていて,実質金利はほぼゼロ or マイナス,つまり,グラフの左上の状態にあるために金価格が下がりにくくなっています.

このように,インフレ圧力が強い時は実質金利が低く抑えられるため金価格が上がりやすくなり,金はインフレに強いというのは過去のデータからも言えることだとわかりました.

これに関連する話題として,最近アメリカではインフレ圧力が強まっていること,そしてコロナ禍によるドルの大量供給や中国の台頭でドルへの信認が薄れてきていて,これまで金に否定的だった著名投資家も金を再評価しはじめています.

It feels very funny because I’ve spent my career talking about why would you want to own gold? It has no income; it costs to store. And yet, when you see the debasement of the currency, you say, ‘What am I going to hold on to?’

私はこれまでずっと「どうして金なんか持つんだ?」と言い続けてきたので,今の状況をとても奇妙に思う.金は金利の儲けもないし,保管のコストもかかる.しかし,通貨の価値下落を目の当たりにすると「何にしがみつけばいいのか」と考えてしまう.

Sam Zell Interview at Bloomberg in the beginning of May 2021

また,最近のバフェットが金について述べているケースはなかったので引用しませんでしたが,金投資に否定的なことで有名なバフェットも,昨年カナダの産金大手バリック・ゴールドの株を購入しました.
金を直接買ったわけではないものの,金鉱株を持つことは間接的に金を持つことなので,金否定論者のバフェットがそうした行動を取ったことは投資家の間ではニュースになりました.

I believe a well-diversified portfolio of non-debt and non-dollar assets along with a short cash position is preferable to a traditional stock/bond mix that is heavily skewed to US dollars.

短期のキャッシュポジションに加え,負債,そしてドルに紐付かない資産によく分散されたポートフォリオは,お決まりのドルに偏った株と債券の混成よりもいいパフォーマンスを出すと思う.

Letter from Ray Dalio on March 15, 2021.

レイ・ダリオはもともとポートフォリオに10%ほどの金を組み込んでいて金否定派ではないですが,金やビットコインなど,負債やドルに紐付かない資産を持つことがポイントだと言っています.

税制面で有利

金の売却益の計算式は

売却価額 - (取得価額 + 売却費用) - 50万円 (特別控除) = 課税譲渡所得金額

で,売却益から50万円を控除出来る点が株式投資と大きく異なります

50万円を利益から控除できるので,年間利益が50万円までなら非課税です.
実際,私は何度か金投資の利益を確定申告したことがありますが,いずれも50万円以下だったので非課税でした.

さらに,5年以上の長期保有の場合は

{ 売却価額 - (取得価額 + 売却費用) - 50万円 (特別控除) } × 50% = 課税譲渡所得金額

と課税売却益を50%に圧縮することができ,これは100g以上の地金などを長期保有している場合などに活用できそうです.

一つ注意は,取得価額を証明する書類がないと売価の5%が取得価額とされてしまう点です.
例えば,実際の取得価額が70万円の金を100万円で売却しようとした場合,本来は利益が30万円なので,50万円控除で非課税にできますが,取得価額を証明する書類がない場合,取得価額は100万円の5%,つまり5万円で計算されるため,95万円の利益として扱われ,この場合50万円の非課税枠があっても45万円に課税されることになります.

このように吐気がするほど不利な扱いになるので,取得価額を証明する書類は絶対に大切に保管しておくことが大切です.

金のデメリット

金のデメリットは

  • 利子・配当をうまない
  • 保管費用がかかる

の2つが挙げられます.

利子・配当をうまない

よく知られているように,金は債券や株と違って利子や配当がでません.
もしかしたら,これが米国株投資家に人気がない理由なのかなと思っています.

金に利子や配当がない理由は,金には発行元がおらず誰の負債でもないためです.
国債や社債,住宅ローンなどは負債を抱えている主体がその見返りとして利子を払う必要がありますが,金は誰の負債でもないために利子や配当がでません.

そのため,金投資で利益を得るには安く買って高く売る,キャピタルゲインを狙うしかありません.

保管費用がかかる

金貨にせよ地金にせよ,金は傷がつくと価値が下がるため丁寧に保管する必要があります.

そして何より一番のリスクは盗難のリスクです.
個人投資家が保有できる金は多くてもせいぜい数kgで,持ち出そうと思えば簡単に持ち出せてしまうため,盗難対策をしっかりと取る必要があります.

そのためには自宅に金庫を設置するか,銀行の貸金庫を借りるといった保管コストがかかります.

因みに私は銀国の貸し金庫を借りていますが,一ヶ月あたりの利用料は1,200円ほどです.

手数料の抑え方

金の買い方は現物,ETFなどいくつかありますが,やはり現物投資が一番だと思います.
金を持ったことがある人なら分かると思いますが,金は間近で見ると本当にきれいに輝いていて,また手に取るとズッシリと重く,資産の王という感じがして,持っているだけでモチベーションが上がります.

これは株や債券などのペーパーアセットでは味わえない感覚なので,金は現物で持つのがいいと思います.

金の現物投資は取引コストが高いと言われていて,実際に三菱マテリアルや田中貴金属工業のサイトを見ても購入金額の2, 3%が手数料としてかかると書かれています.

しかし,私は三菱マテリアルで金を買っていますが,金の購入にかかる手数料はゼロです.

なぜそれができるかと言うと,スポット注文をしているからです.
積立購入だとたしかに手数料がかかりますが,スポット注文なら手数料がかからず,負担は買付金の振込手数料のみです.
振込手数料はネット銀行で簡単に無料化できるので,自分で買い注文を出すという手間を厭わなければ,金の手数料を抑えることが出来ます.

三菱マテリアルはその日のレートで買うスポット購入と,1ヶ月で金額を均等割りして買ってくれる月間スポットがありますが,私は月間スポットで購入しています.
これなら注文を出すのも月一回なので全然負担ではありません.

また年に一回,残高報告書が郵送されますが,これを停止してネット確認だけにすれば年会費もかかりません.

金投資 = 手数料高い と思われがちですが,工夫をすればコストを抑えることは簡単です.

ポートフォリオへの組み込み方

金の位置付けを一言で表すなら「保険」です.
金は儲けるのではなく備えるもの,株が剣なら金は盾です.
「有事の金」,「金は嵐の晩に輝く」と言われるように金はいざという時に強い力を発揮します.
そういう時に金を持っていれば他の資産が受けたダメージを金で吸収します.

ただ,保険を使うことが起きないのが一番いいように,金も長期保有して役立たないのがベストというスタンスです.

また,金はインカムゲインをうまず,保有しているだけでは資産形成に貢献しないので投資の主役にはなりません,脇役です

そのため,私は金は全資産の10%程度を目安に持つようにして,最大でも15%を上限にしています.
ちなみに2021年4月,金が全資産に占める割合は約8%でした.

まとめ

金は投資の主役にはなりませんが,インフレに強く,いざという時に資産を守ってくれる保険のような役割です.
一般的には手数料が高く割に合わないと思われがちですが,上手に付き合えばコストもかかりません.

投資では勝つよりも負けないほうが大切ですので,守りの資産である金を脇役として資産に組み込んでおくと運用ストーリーに安心感が出ます.



Posted by Econ