【書評】『予想どおりに不合理』 人間とは不自由な生き物

2021年8月30日書評

どうも,Econです.

金融や財務に関する知識は投資に必要ですが,感情に負けて間違った行動をしないように人間の心理について学ぶことも大事で,実際にピーター・リンチなどの有名な投資家も心理学を学ぶことを勧めています.

この記事で紹介する『予想どおりに不合理』は行動経済学についての本で,人間が合理的に行動できないことを様々なケースから示していて「頭では合理的でないとわかるんだけど,やっぱり私もそっちを選ぶなぁ」というケースが満載です.投資に関するケースはありませんが投資や資産運用にも役立ちます.

相対性バイアス

人間は特に優劣を判断する時,あれに比べてこっちはいい/悪いというように相対的な比較しかできず,絶対的な判断を下すことはできないとされています.マウンティングなんてその最たる例ですね.

これは人間が生きていく上で便利ですが,比べやすいものばかりに注目して比べにくいものを無視するという相対性バイアスを生んでしまいます.投資で言うと,数字で比較できる定量分析には力を入れるけど定性分析の比較はしないというのが挙げられます.A社はB社に比べて利益率が高いとか,自己資本比率が高いので財務が健全だということは簡単に言えますが,A社のブランドストーリーはB社よりもいいと判断することは難しいため,定性分析を比較することはあまりしません.

また,この相対性バイアスで投資に活かせる教訓は大きい輪から離れることです.Twitterで特に顕著ですが,資産額や投資パフォーマンスを自慢したりマウンティングするようなツイートからは距離を取ったほうがいいです(そもそもそれが真実かも相当に怪しいですが).そんなツイートを見ても「何でこの人はこんなにうまくやってるんだ」という嫉妬,「この人に比べて自分はショボいな」という劣等感などのネガティブな感情しか生まれず,百害あって一利なしです.

所有意識の罠

人間は自分が所有しているものや性質を過大評価します.例えば,自分の車の運転は平均レベルよりうまい(補)と考えたり,自分の家の家具は他の家の家具よりもいいものだと考えるなど,このケースは枚挙にいとまがありません.

(補) それにしても,ウィンカーも出さずに車線変更や右左折をする車,夜になってもライト点灯しない車など,運転下手を通り越して免許返納しろと言いたい輩があまりに増えたと感じるのは私だけではないはずです.

投資でもこの所有意識の罠が働きます.例えば,私はマイクロソフトの株を持っていて,魅力的な銘柄なので追加投資をしたいのですが,今日(2021年8月30日)のマイクロソフトの株価は$299.72で,この価格では高すぎて追加投資なんてとても出来ないと思っています.

じゃあ,この株価で売るかと言うと売りません.「買うには高すぎるけど売るには高くない」という思いがあるのですが,所有意識の罠に囚われているのが自分でもよくわかります.ただ,これは私だけでなく投資家なら誰でも陥る罠です.値上がりしている株を大事に持ち続け,「あの時もっと早く売っておけばよかった」と後で後悔するのは所有効果の罠によるものです.

残念ながら,所有意識を完全に排除することはできません.私も頭では合理的でないと理解していますが,今の株価でマイクロソフトを売ることはできません.所有意識は排除できませんが,それに影響されていると気づくだけでも少しは合理的な判断ができるようになるかもしれません.

選択肢を残し続ける

人間は選択肢が狭まることに本能的に恐怖を覚えることがこの本の実験からわかります.確かに,選択肢を残しておきたいという気持ちはわかりますし,選択肢が多い人生のほうが豊かな気がします.

しかし,チェリーピッキングをしようとして色々な選択肢を行ったり来たりしても結局コストばかりかかって果実を得られないというのは多分誰もが納得することだと思います.ピアノ,バイオリン,フルートを習っても結局どれも中途半端なレベルで終わってしまうのは明らかで,それなら一つの楽器に集中してその楽器のスキルを高めるべきです.よく言う選択と集中ですね.

投資もこれと一緒です.株,債券(為替),不動産,コモディティ,自分はどれをメインで勝負していくのかある程度絞る必要があります.メイン以外の投資はしてはいけないというものではないですが,例えば株をメインにするなら不動産はREIT,コモディティは毎月の積立投資など,あまり労力をかけない方法を選ぶべきです.

株もやりつつ不動産投資も,なんていうのはプロの投資家ならまだしも,サラリーマン投資家が踏み出すものではないと思っています.

まとめ

この本に書かれている心理バイアスを排除することはできません.しかし,人間にはこういう心理バイアスが働いて,その結果こういう過ちを犯しやすくなるというのを理解しておくことは大切です.

もっとも,その認識を持った上で過ちを避けるように合理的な行動を取れるかどうかは最後はその人の意志の強さ,だと思いますが.

予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

それでは,また.



Posted by Econ